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羅城門・・・3つの話 [社寺]

羅城門といえば3つの物語が思い浮かぶ。
1.謡曲『羅生門』
丹後の国大江山で鬼神を退治して都へ帰った源頼光は、その時の面々を館に集めて、酒宴を催しいろいろ話し合っていた。この時頼光は一同に向って、近頃都で面白い話はないかと所望すると、先ず保昌の語るところは、近頃羅生門によなよな鬼が出て人を取るという噂があると。
側にいた綱がこれを聞いて王城に近い所にさようなことはある筈がないと言い、口論の末、綱は頼光から印をいただいて、その夜ただちに馬にまたがってただ一人、二条の大宮から南に雨の仲を九条表に駒を走らせた。
雨はますます烈しく、風も強く吹いて物凄く、駒もおののいて立ちすくみ進まない。綱は馬をおりて羅生門の石段に上がって印を立ておいて帰ろうとすると、俄に化生の者が現れ、後ろから綱の甲をつかんで引き戻すのであった。
綱はたちまち太刀を振るって斬ってかかれば、鬼神はますます怒り狂うを綱は少しも騒がず、遂に鬼神の腕を斬り落とし、恐れをなした鬼神は黒雲に隠れ去り、綱はめでたく武名をあげたのである。

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↑このあたりに大きな門があったなんて信じられない

簡単にいうと肝試しの話なんですね。そういうとあまり面白くないな・・・。
鬼も情けない。切った腕の切り口の細胞をiPS細胞化して、新しい鬼となり、2体の鬼となり、綱に襲いかかってきた。綱は「勝手にそういう手法を使っては、ダメだ。特許にひっかかるで!」と一括。2体の鬼は「そんなこと知るか!」と言いながらも、東大やハーバード大の方へ退散した。時代は流れ、人間のような鬼が現代に充満したらしい。

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この謡曲『羅生門』は、今昔物語の羅城門に鬼が棲むというのと、『平家物語』の渡辺綱が鬼の手を切り取る話の合作らしい。

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↑九条通に面した矢取地蔵のあるお堂

2.『平家物語』(11巻剣巻下)
平家物語では源頼光の使いで一条大宮へ行った渡辺綱が帰り夜も遅くなり、一条戻橋に差し掛かると美しい女房が「夜も更けて恐ろしいので送って欲しい」と懇願するので馬の後ろに乗せます。女房は綱の後ろから髷を掴みますが、綱は名刀『髯切』で髷を掴んでいる鬼の手を切り落としました。その手は女房の時は雪の肌に見えたものが毛がごわごわと生えて色黒く醜く縮んでいました。その手をみた源頼光は驚き安部清明に占ってもらうと、綱に七日間、仁王経を唱え続けるよう宣託します。六日目、綱の養母が訪ねてきたのですが明日までは会えないと断ります。「親が訪ねてきたのに門さえ開かぬとは七日間の祈祷も効果はない。今より親と思うな」と強く言うので綱は門を開き招きいれます。そして、養母の言うがまま鬼の手をみせますと「これはわが手ぞや」と恐ろしい鬼となり、その手を掴んで破風を蹴破り夜空に消えてしまいました。

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この物語『平家物語』では剣の由来ででてくるのか。舞台が羅城門じゃなく、一条戻り橋になっている。しかもちゃっかり安部清明まで登場させている。この一条戻り橋で遭遇したのは、橋姫系「嫉妬の鬼」らしい。鬼も女性の方が怖いだろうな。
鬼が男の場合は、「仕事の鬼」「キックの鬼」「脳トレの鬼(鬼トレ)」「ラーメンの鬼」「電力の鬼」「リフォームの鬼」「的中の鬼」「泣いた赤鬼」「負債に泣いた青鬼」・・・と平和なイメージの鬼が多いですね。

ちなみに仏様が極楽から地上をご覧になると、地上の人間は、みな「般若の面」の顔をしているそうです。生きている人間の心の中に、神仏も鬼悪魔も潜んでいる。たまたま鬼や悪魔が顕現しないのは、そういう縁(条件)に触れていないだけ。もちろん神仏が顕現する縁にも触れていないのでしょうね・・・。

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↑これかな・・・神泉苑で雨乞い合戦をして空海に負けた守敏が、やけくそになり、空海に矢を放ったらしい。それをこのお地蔵さんが盾になったらしい。背中に傷があるらしいけど。わかりません。

3.『羅生門』芥川龍之介
これには、形として鬼はでてこない。でもこれが一番怖い物語かもしれません。
『羅生門』の「生」は、人間の心の中の葛藤という意味でこう書いたのでしょうね。地名的には「城」が正しいのです。『今昔物語』では「生」となっている。
生きている人間の心の闇みたいなことからすると「生」でしょうね。
ニュースなんかを見ると、生きている人間の闇の怖さがわかりますね。

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タグ:社寺 京都
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コメント 10

guran

おはようございます!
こんな石碑や看板があるんですね。
一度探してみます^^
by guran (2012-11-05 07:00) 

京男

>guranさん、おはようございます。
実際にその場所に立つと不思議な気持ちになりますね。
餃子を食べたついでに行ってみるのもいいでしょう。
by 京男 (2012-11-05 07:20) 

keiko

こんにちは。
羅城門にまつわる話が沢山あるのはそれだけ重要だったってことですね。ガイドブックでは上っ面しか分かりませんし京都の奥は深過ぎて地球の裏側に辿り着いてしまいそうですね。

京都もかなり寒くなって来たことでしょうね。京男さん風邪引かないようにして下さいね(^_^)
by keiko (2012-11-05 12:53) 

すー

こんにちは

鬼より怖い人間・・・・
日本人もどうなっていくのでしょうね。何か恐ろしい事件が連続です・・・
by すー (2012-11-05 13:22) 

京男

>keikoさん、こんにちは。
京都は歴史なものが結構あります。実際はどうだったのか興味がありますね。歴史も奥行きが深いしね。また負けた側の歴史はもっともっと奥があるだろうし。
今日は風が冷たいですね。風邪はあまりひかない方なのですが、最近はどうかな・・・。
by 京男 (2012-11-05 15:27) 

京男

>すーさん、こんにちは。
人間の心の奥底に棲む鬼は怖いですよね。
その鬼たちが闊歩している感じがします。
地獄も裸足で逃げ出しそうな現実が多い。いやですね。
by 京男 (2012-11-05 15:29) 

せつこ

「鬼の目にも涙」
と言うから、人間の方が怖い心を持っているかも。
こんな小さい街でも強盗殺人事件が起きたのよ!
by せつこ (2012-11-05 20:50) 

京男

>せつこさん、こんばんは。
最近は、人間の心に住む鬼の元気がいいようですね。
むごい事件ばかりで気が滅入ります。
本家の鬼が呆れているかも。
by 京男 (2012-11-05 22:24) 

BPノスタルジックカーショー

おはようございます。

さすがにお詳しいですね。
このところの日本での残忍な事件は人間が鬼になっているんですね!!
by BPノスタルジックカーショー (2012-11-06 04:14) 

京男

>BPノスタルジックカーショーさん、おはようございます
仏教では、仏さんの世界からこの世の人間を見ると、みんな般若の面のような顔をしているらしいです。
人間の心には、鬼も仏も住んでいる。縁(条件)によって出てくるそうです。
by 京男 (2012-11-06 04:45) 

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